人の暮らし(2)(People's Days) (2)



上の2枚の写真は、中流家庭と形容できる居住区の様子です。築10年は経っているのかな、というような家々もかなり見られます。

フィリピンの生活階層を、仮に分類してみると、まず高級・上流・中流・下層・極貧層といった感じです。
ごく大ざっぱに各層の特徴を挙げてみると、高級は上流のはるか上で、重々しいゲートを入ると、2,300メーターも続く色とりどりの石畳の道の先に家の玄関が見えてくる。駐車場には高級車が4,5台、プールもある。家というよりは、お屋敷、というよりも大邸宅がどこまでも軒を拡げている。

上流は高級の縮小版。
中流はきちんとした家構えで、車や種々の電化製品を保有している家庭も少なくない。
下層は板張りや石造りの簡易住居。極貧は板張りの、単に風雨よけのような空間でトイレがない家も多い。各層の間にも、細かく分ければ、上中下があります。

どこで線引きをして居住環境を分類するかは、実のところ、難しい問題です。階層の区別自体、大して意味のないことかもしれません。
人びとの暮らしが年々向上していくにつれて、各層が徐々に底上げされていけば、下層の一部は極貧に、中流の一部は下層にと格下げされてしまうこともあり得ます。

非常に高い確率でいえることがひとつあります。
高級階層は安穏として高級に留まり、極貧階層は苛酷にも極貧から抜け出すことができないという現実です。

フィリピン経済を支配している巨大財閥ーー中華系とスペイン系ーーは自分たちの利権を世襲から世襲へ、子々孫々、さらにまたその子々孫々へとつないでいる。

政治家もまた同様。高級・特権階級だけが、「露骨」という言葉が思わず赤面してしまうほどの露骨さで、永永として栄えていく社会構造になっています。



極貧層の人びとが世に出るチャンスは万に一つもないといっても過言ではありません。
Sikad(「シカッド」または「ペディキャブ」)という乗り物があります。(上の写真)
自転車に側車をつけて客を運ぶ「自転車タクシー」です。バイクに側車をつけたのが、トライシクル。トライシクルのさらに下に位置する商売です。

トライシクルもシカッドも商売の形態は同じです。
トライシクルのドライバーはオーナーに1日150~200ペソを払って車両を借りる。借り賃を超えた分が自分の稼ぎとなる。数人のドライバーに訊いてみたところ、1日の収入は350~550ペソくらい。ドライバーはムスリム(イスラム教徒)がかなりの割合を占めているそうです。

シカッドの漕ぎ手はオーナーに1日50ペソくらい払って商売をしています。日々の稼ぎは100~200ペソくらい。彼らの目指す先は、トライシクルのドライバーになることです。

シカッドにはスクワッター(「Squatter」公有地の不法居住者)が非常に多いと聞きます。下は12,3歳~上は5,60歳くらいまでが、炎天下で汗をかきかきペダルを漕いでいる。料金は5ペソから。本通りの通行は禁じられているので、側道や裏道、地方の町町の路地などでよく見かけます。

あるとき、どう見てもまだ中学生くらいと思える少年がシカッドを漕いでいる風景に出くわしたことがあります。
「あの子はまだ中学生くらいかな」その子供の親を知っているという知り合いのフィリピン人に訊いてみました。
「13歳。あの子の親もね、同じ仕事。あの子が大人になったら、その子供も、またその子供も一生涯ペダルを漕ぎ続けるのよ。雨の日も3,4月の夏の暑い日も」

下の写真は戸建て分譲住宅で、全部で10棟ほどの小規模開発地です。庭がなくて残念ですね。中流と上流の中間にほぼ近いと言えるでしょう。
まだ未完成の家もあります。2世帯ほどが入居しています。値段や土地面積などを調べたかったのですが、あいにくと今回はその機会がありませんでした。
それにしても、日本の風景と変わりませんね。日本でずいぶん前に仕事で行ったことがある三鷹市・井口あたりの建売にそっくりです。




下の写真。
長屋式分譲住宅の代表的な例です。間取りはどの家も二階建てで、15畳ずつくらいの広さです。1,2階にトイレ。天井が高いので圧迫感がない。

ここの一棟に住む私の友人の話によれば、賃貸もあれば分譲もあるそうです。賃貸は月16,000ペソくらいで、本来の所有者に毎月、支払うことになります。分譲で250万ペソくらい。


2020年度版の「World Health Statistics」(世界保健統計)によると、フィリピン人の男の平均寿命は66.2歳、女が72.6歳。生活階層が上になればなるほど、平均寿命も高くなります。食生活の充実、衛生への気配りなどが行き届いているためでしょう。

フィリピン人と雑談をしていて気づく話題のひとつは、健康問題です。とくに中高年者の健康への関心は非常に高い。

日本とは正反対に、フィリピンでは年々人口が増えています。昨年の統計では1億1千万人近い。豊富な労働力が支える堅調な経済成長を基盤として、健康志向への高まりとともに平均寿命も徐々に延びていくことは、ほぼ確実と思われます。住宅環境を整備することが喫緊の課題のひとつになっています。





プラプラと散歩をしていると、上の写真のような看板を目にすることがよくあります。早晩、看板の向こう側に集合住宅が建つことでしょう。

以上、ここまでは今風のフィリピン住宅をいくつかご紹介してきました。下の写真は、フィリピンのどこにでもある家々です。圧倒的多数のフィリピン人の住まいです。







【お知らせ】
下記はトッポジージョさんのURLです。トッポジージョさんが今日まで生きてきた営みを、少年時代からたんたんと綴っています。ある年代層以上の人びとにとって、普遍性のある生活記録です。ご一読をお薦めします。


* 1ペソ≒2.2円で計算してください。

In the Philippines, condos, subdivisions, and apartment houses have been built recently as economic growth has steadily been on the rise.
Almost all of the Filipino people are eager to get and live at condos or subdivisions.

Many people here say that it would be extraordinarily difficult for the poor to get better jobs and make money because the rich and politicians have exclusively transferred their vested rights and interests only to their posterity.

 
 


コメント

  1. 理路庵先生ブログ更新ありがとうございます。
    三鷹市井口辺りの風景に似ている住宅街、飯田産業がフィリピンに進出しているのかと思ってしまいました。
    一方で私の子供の頃でさえ見かけなかった風に飛ばされそうなあばら家。
    固定された貧富の差。
    一生シカッドをこぐ極貧の人達。
    前回のブログにトライシクルの運転手とのやりとりがありましたが、あの意味が分かりました。お国柄なんかじゃなかったんですね。
    あのマルコスがいなくなって民主化されたはずのフィリピンで未だに極端な貧富の差があるのは悲しい。
    借金してでも出稼ぎに行く人が出るのも無理は無いですね。
    気候が温暖なのがせめてもの救いと思いました。
    一枚の写真の裏側にある真実。
    何度も見直して考えさせられました。

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